こんにちは。韓国で2人の子どもたちを日韓バイリンガルにしようとしているまめちゃん(@mame_chang)です。日本にいる時は、それほど聞く機会も無かったのですが、海外に住み始めて現地の方々に日本語を教え始めたり自分の子どもに日本語を教えたりしていると、時々耳にする言葉があります。
それが「母語」や「母国語」という言葉です。これらは一見似ていますが同じ意味の言葉ではありません。しかし、周りを見ていると「母語」と使うべきところに「母国語」という言葉を使っている場合が多いように思います。
では、この2つの言葉が同じ意味ではないとしたら、どのような違いがあるのでしょうか。 今回は「母語」と「母国語」についてお話します。
何が違う?「母語」と「母国語」
以前外国語の勉強の話をしている時に、よく「母語」や「母国語」という 言葉が出てきまました。また、先ほどのように海外に出て現地の方々に日本語を教えたり子供に日本語を教えたりしていると、時々聞きます。 日本にいて海外で子供に日本語を教えるという経験はなくても、英語の勉強などをしていてもたまに出てくる言葉なので聞いたことがあるという人も多いかと思います。 「母語」と「母国語」は、「国」という漢字が1つあるかないかの違いですが、意味はどうなのでしょうか。「国」という漢字が入るのと入らないのとで意味は変わるのでしょうか。
結論から言うと・・・ この2つは同じではありません。 ここで、「えっ?! そうなの?」と思う人もいるかと思いますが、実は日本に住んでいるとこれは結構わかりにくいものなのです。 では、この2つは何が違うのかや、なぜ日本にいるとわかりにくいのかについて早速お話したいと思います。
ここが違う!
表面的に見ると、さきほどのように「国」という漢字が1つあるかないかの違いに見えます。
しかし意味は、違います。
まず、1つずつ見ていきましょう。
- 母語・・・・基本的に母から習った言葉、一番自由に使える言葉。
- 母国語・・・自分が所属している国(母国)の言葉。
簡単に説明するとこのようになります。 日本人が日本で両親が日本人のもとに生まれて日本語で育てられたとします。 すると、親から習った言葉(母語)は日本語、所属している国の言葉(母国語)も日本語となります。 そのため、「母語=母国語」となり、なかなか実感がないしわかりにくいのが現状です。 では、次の例はどうでしょうか。
★.Aさんの場合
日本で生まれ育ち、結婚してアメリカに20年以上住んでいる。夫はアメリカ人で家庭では英語を話している。 子供は、中学生で国籍は日本とアメリカの二重国籍。 子供は日本語はできなくはないが英語の方がはるかに自由に使える。Aさんも英語はネイティブと間違われるぐらいのレベルだが、やっぱり本人は日本語が楽だという。
Aさんの場合は、日本生まれの日本育ちなので母国は日本だといえます。 また家庭では英語を話していても、やはり英語を間違えることもあるそうです。 日本語が一番使いこなせるというので母語は日本語となります。
一方で、Aさんのお子さんは国籍が2つで日本国籍を持っていても英語の方がはるかに自由に使えるということは、母語は英語、母国語は母国がアメリカと考えたら英語、日本と考えたら日本語となります。
★.Bさんの場合
ベトナム生まれのベトナム育ち。子供のころに事情により養子に出されてカナダで育つ。 現在成人したBさんはベトナム語はほとんど忘れてしまって今では英語での生活には不自由はまったく感じていない。
Bさんは、もともと母語がベトナム語だったはずなのですが、カナダで養子として育てられた過程でベトナム語を完全に忘れてしまっています。 養子に入った家庭ではベトナム語がわかる人がおらず、コミュニケーションの手段は英語だったため、ベトナム語の保持よりも英語の習得が優先された結果ではないかと思います。 Bさんがまだベトナム国籍で自分の母国はベトナムだと考えるなら母国語はベトナム語で、母語はベトナム語だったのに今では忘れてしまったので英語となります。
★.Cさんの場合
韓国生まれの韓国育ち。父は韓国人で母は日本人。家庭では日本語を話している。成人したのをきっかけに日本国籍を選んだが日本に住んだことはない。日本語もできるが、韓国で小学校から大学まで学校に通ったのでどちらかといえば韓国語の方が強い。
Cさんの場合は結果として日本国籍を選んだので現在の母国は日本で、Cさんの母国語は日本語だと言えます。 しかし言語的には韓国語の方が強く、自由に使えるので母語は韓国語といえます。
以上のAさん~Cさんの例のように、母語と母国語が異なる場合は比較的わかりやすいです。 そしてこのように考えると、やはり日本で生まれ育った日本人は母語も母国語も日本語なのです。
そして、母語は「第一言語」や「優勢言語」と呼ばれることもあります。
母語や母国語は1つではない?!
この話の流れと例でいくと、母語は1つだけという結論になりそうですが、いくつかの言語を話す環境で生まれ育った場合は、その成長過程で意識せずに2つも3つも言語を話すこともあり、
「母語はかならずしも1人に1つとは限りません。」といえます。
また、母国語についてもスイスやベルギー、カナダなどのように公用語や国語が1つ以上ある場合は母国語は1つとは限りません。 海外で子育てをしながら子供に日本語を教えていると、自分の子供は日本語を母語レベルにしてあげられたらいいなぁ、と思ったりもします。
まとめ
今回は、時々同じ意味で使われることがある「母語」と「母国語」について、実は同じ意味ではないことや日本で日本人の両親のもとに生まれ育つと実感しにくいこと、そしてAさん~Cさんの3つの例も挙げました。 最後にもう一度違いを挙げると以下のようになります。
- 母語・・・・基本的に母から習った言葉、一番自由に使える言葉。
- 母国語・・・自分が所属している国(母国)の言葉。
海外で子供に日本語を受け継いで欲しいと思う場合は、途中でどうなるかはさておき現地の言語と日本語を同じぐらいに伸ばしたいと思うのものではないでしょうか。 私も自分の子供の日本語は母語レベルにまで伸ばしたいと考えてバイリンガル育児を始めました。
親子で一緒にがんばるバイリンガルへの道。 まずは親が色々と正しい知識を持つことも大切ではないかと思います。まずは知育関係の雑誌でも読んで....。