こんにちは。韓国で2人の子どもたちをバイリンガルに育てるべく毎日奮闘中のまめちゃん(@mame_chang)です。韓国に住んで長いということや、周りにうちと同じような日韓夫婦や国際結婚の方々がいることなどの理由により、バイリンガル育児中の方々やもう子育てが終わった先輩ママや先輩パパがいます。
そのような方々と話したり様子を見て思ったことや私自身のバイリンガル子育てについてTwitterでつぶやいていると、
という声があることがあります。現在バイリンガル子育てをしているママやパパたちには、もう子育てが終わった方々の経験は話を聞くだけでもかなり参考になるものです。
今回は、以前の↓このつぶやきについてもう少し詳しくお話ししたいと思います。
今日は韓国で生まれ育った22歳の青年と話した。お母さんは日本人(韓国語堪能)🇯🇵でお父さんは韓国人(日本語堪能)🇰🇷。
両親は日本語で会話してたが興味がなくて日本語は覚えなかったという。
日本語は中級レベル。国際結婚でも親が日本人でも本人に興味がなければバイリンガルにはならない。
— バイリンガル育児@まめリンガル (@mame_chang) 2018年9月20日
国際結婚の子どもがバイリンガルにならないのは例えばこんな時
日本と韓国は隣同士の国で、地理的にも近いし飛行機に乗れば福岡や大阪なんてあっという間に着きます。また、日本語と韓国語は言語的に近いのか、日本語に聞こえる韓国語があったり日本語がちゃんとわからなくても日本に行ったことがあったりいくつか日本語を知っている韓国人もいます。
しかし、だからと言って日韓夫婦の家庭の子どもがみんな日韓バイリンガルとは限りません。日韓夫婦でも夫婦の一方が日本語(または韓国語)が話せないということもあります。また夫婦がお互いの言語がわかったとしても育て方や環境によっては子どもはバイリンガルにはなりません。そして、日韓夫婦の親だけでなく子どもの方にも理由があることもあります。
以前、私がツイッターでつぶやいた22歳の青年の場合は、どのような環境や理由でバイリンガルとして育たなかったのでしょうか。
★.バイリンガルとは?
以前このブログでは「バイリンガルの種類について」というタイトルで書きましたが、ひと言で「バイリンガル」と言っても種類があります。この記事に書いたことにプラスして、ある程度成長してから外国語を学びバイリンガルになるという後付けのタイプの場合もあります。
・バイリンガルの種類について ↓↓
今回の22歳の青年については、家庭や家の外で日本語と韓国語を子どものころから使いバイリンガル児として育たなかったという意味で「バイリンガルにはならなかった」という言葉を使います。
22歳の青年はどんな国際結婚の家庭で育ったのか?
さて、今回のお話の22歳の青年ですが、ここからはAさんと呼ぶことにします。まずは、Aさんの家庭の状況を簡単にお話しすると・・・
両親 : 父は韓国人(日本語堪能)、母は日本人(韓国語堪能)
居住国:韓国(Aさんは日本に住んだことはない)
兄弟 :兄弟があと2人いる(兄弟全員韓国生まれ韓国育ち)
学校 :すべて韓国の現地校
Aさんによると、ご両親は家の中では日本語で会話をしていたそうです。それは子ども達をバイリンガルにするためではなかったようです。また、お母さんは韓国語の会話は上手とのことですが、読み書きはたまに周りの助けが必要なことがあるそうです。
そして、Aさんは3人兄弟なのですが、兄弟間の言語は常に韓国語だったそうです。通っていた学校もすべて韓国の現地校だったため昼間学校でも韓国語、家に帰ってきて兄弟とも韓国語で話していたとのことです。ご両親は日本語を話していたそうなのですが、家族全員揃う場ではやはり韓国語で会話だったそうです。
Aさんのご両親は日本語で話しかけなかったのか?
ご両親の会話が日本語なら、家庭内で日本語を自然に聞いているはずだと思います。果たしてAさんのご両親はAさんや後2人の兄弟に日本語で話しかけなかったのでしょうか?
答えは「話しかけた」です。ご両親、特に日本語がネイティブであるお母さんはAさんが小さい頃は日本語で話しかけたそうです。また、小さい頃は日本の親戚にも時々会っていたとのことです。ちなみに日本側の親戚に韓国語がわかる人はいないとのことです。
ここまでの話から考えると、
- 両親はAさんに日本語で話しかけていた。
- 一時帰国の時に日本の親戚にも会っていた。
両親に日本語で話しかけられ、韓国語がわからない日本側の親戚に時々会ってると日本語を聞いたり話したりする機会が小さいころからたくさんあったように見え、バイリンガル児として育つ要素があったように思います。
では、どうしてAさんはそれでも日韓バイリンガルとして育たなかったのでしょうか。
Aさんはなぜ日韓バイリンガルにならなかったのか?
結論から言うとツイッターでのつぶやきの最後にあるように「興味がなかったから」です。ここをもう少し詳しく話すとやはり理由は家庭環境にあると思います。
私はAさんにその手がかりとなるような質問をいくつかしてみました。そのうちのいくつかをご紹介すると次のようになります。
Q:お母さんから日本語で話しかけられた時、何語で答えましたか。
A:韓国語です。
Q:それに対してお母さんはどんな反応でしたか。
A:母は韓国語がわかるので結局会話は韓国語になりました。その方が早いからかもしれません。みんな韓国に住んでますし。
そして、日本の親戚についても聞いてみました。
Q:日本の親戚は韓国語がわからないとのことでしたが日本語で会話しなかったんですか。
A:わからないことは全部両親が日本語で言ってくれたので、特に日本語ができなくてもなんとかなりました。
ここで注目すべきは、どんな点なのでしょうか。
注目すべき点は親の対応
Aさんの話を聞いていると、私はお母さんの対応が目に浮かぶようでした。お母さんが日本語で話しかけても韓国語で答え、その答えられた韓国語を聞いて意味がわかるお母さんはそこで止めずにそのまま言語を韓国語に途中で切り替えて会話を続けてしまったというわけです。想像するに、次のような感じだったと思います。
お母さん:今日、学校どうだった?
Aさん : 재미 있었어요.(楽しかった)
お母さん:그래… 대행이네.(そう、よかったね。)
.
この会話のパターンだと会話のスムーズな流れを止めないという意味ではいいのですが、子どもに日本語を覚えて使ってもらうという意味ではどうでしょうか。子どもは「楽しかった」という日本語を自分の口で言うことや、「そう、よかったね。」というコメントを聞いて理解するということはできないと思います。
また、このような会話が毎日続いてたとすると、お母さんもおそらく最初から日本語ではなく韓国語で話しかけるようになり子どもは韓国語で答え、ますます日本語を使う機会は家庭ではなくなっていったのではないかと思います。
そうすると、日本に一時帰国した時に普段から使っていない日本語をいきなり話そうとしても文を作ることができず、言いたい言葉が日本語でわからず困ってしまうと思います。そのような子どもの様子を見てきっとご両親が間に入って通訳をし、そしてますます子供は親に頼り、、、という無限のループに陥っていったのかもしれません。
では、家庭ではどうするべきだったのでしょうか。
「我が家のルール」を決める
Aさんのご両親が、Aさん達兄弟をどこまで日韓バイリンガルに育てようと考えていたかはわかりませんが、Aさんの話を聞く限り、おそらくご両親はバイリンガルに育てるということをそれほど意識していなかったか、具体的な方法がわからなかったか、または会話がスムーズにいく方を優先していたかのどれかではないかと思います。
現在、2人の子ども達を日韓バイリンガルにしようと日々取り組んでいる私の目から見ると、まずは「我が家のルール」を決めた方がいいかなと思いました。それは例えば以下のようなことです。
- 家の中、家族とは日本語で話すこと。
- 自分の言葉で言えないことは別の言葉を使って説明すること。
- 意味のわからない日本語が出てきたらその場で聞くこと。
この3つは我が家で実践していることです。...と言っても1.は子ども達が成長するにつれ難しいなぁ、と感じています。意識していても難しいので意識していないとなおさらではないかと思います。
Aさんが日本語を覚えることに興味がなかった理由とは
ここで、もう一度Aさんについてまとめると次のようになります。
- 両親は日韓国際結婚でお互いの言語が堪能である。
- 韓国在住で学校は全て韓国の現地校なので日本語は要らない。
- 日本の親戚と会う時は日本語が必要だが両親が通訳してくれる。
このように、国際結婚でご両親がお互いの言語が堪能であっても子どもたちはそれを受け継ぐとは限らず、Aさんのように韓国語が通じるなら、そして日本の親戚と話したかったら親が間に入って通訳してくれるなら、
と考えて興味を持たなかったのも納得できます。そして、
「では、お母さんが韓国語ができなかったらAさんの日本語は伸びたのでは?」
という考え方もあるかもしれませんが、そうではありません。バイリンガル子育てをする上で現地語がわかるというのは「親(私)が韓国語がわからなければ子供の日本語はもっと伸びてたのかな?!」にも書いたとおり利点があります。
・親が現地語がわかる利点について ↓↓
日本語の学習を始めたAさん
その後、高校生辺りから「日本語をやってみようかなぁ」となんとなく思い始めて大学に入ってから本格的に日本語の勉強を始めたそうです。私がAさんに出会ったのは22歳の時なので、「日韓バイリンガル児」ではなく日本語を「外国語として勉強する学習者」として勉強しているのです。
日本語の学習を始めたAさんについて、お母さんはとても喜んでいらっしゃるそうです。しかし、家族との会話は今も韓国語だそうです。理由は
「家族と韓国語で話すのが習慣になっているから」
「言いたいことがいきなり全部日本語で言えないのでもどかしいから」
だそうです。習慣を変えるにはかなりの努力と家族の協力が必要です。
私の日本語教師的な目線でみると、Aさんは私が出会った時は日本語は中級レベルでした。日本語を聞いたらなんとなくわかるのですが、言いたいことを日本語で言おうとすると発音や作る文に韓国語の影響がいたるところに出ていました。
今後、Aさんのがんばり次第で日本語は伸びると思いますが、おそらく発音の韓国語なまりをなくしたり作る文を日本語らしくするには相当な努力が必要だと感じました。
まとめ
今回は、以前ツイッターで私がつぶやいた韓国生まれ韓国育ちの22歳の青年(Aさん)について、もうちょっと詳しく知りたいという声があったため、なぜAさんが日韓バイリンガルに育たなかったのかをAさんに聞いた話からご紹介しました。
子育てをしていると、子どもって手がかかるので「早く大きくなって欲しい」と思うこともあるのですが、過ぎてみるとあっという間だったという話もよく聞きます。過ぎた時間は戻らないし子どもをバイリンガル児として育てるなら小さいころから親の努力と根気が必要となります。
Aさんが育った言語環境から考えると、子どもを小さいころからバイリンガル児として育てるには、
「我が家のルールが必要」
「親が子供をバイリンガルにするという意識」
「習慣化」
が欠かせないと思います。言うのは簡単で実践は難しいのですが、できることから一歩一歩.......ですね。
それから、Twitterではバイリンガル子育ての事例や方法、情報などを毎日つぶやいています。@mame_chang のフォロー、お待ちしています~。