こんにちは。韓国で二人の子ども達を日韓バイリンガルに育てているまめちゃん(@mame_chang)です。少し前のことなのですが、韓国在住の日本人ママから次のような相談が来ました。
子どもを韓国の保育園に通わせ始めたのですが、韓国語がうまく通じないためか、保育園の先生から家でも韓国語を使うようにと言われました。これってそのまま言われた通りにしてもいいのでしょうか。
これは、どうしたらいいと思うでしょうか。
今回はこの日本人ママからの質問(相談)にお答えしていきたいと思います。(今回の話はこの日本人ママから了承を得て書いています。)
★この記事は動画でも聞くことができます(スライド+音声)。
保育園の先生に「家でも韓国語を話してください」と言われた!その通りにするとどうなる?
まず、保育園の先生に言われた通りにするかどうかはちょっと置いておいて、この日本人ママ(以下、Aさんと呼びます)の家庭環境を簡単にみてみたいと思います。
家族 :日韓夫婦(夫は韓国語のみ、妻(Aさん)は日本語と韓国語ができて韓国語は上級レベル)
子ども :1人
日韓夫婦ですがご主人は日本語がわからないので、夫婦間の言語は韓国語です。この状況ですが、Aさんはお子さんには日本語で話しかけていたそうです。そしてお子さんが保育園(韓国で言うオリニチブ)に行かせるようになると、家でAさんと日本語で話していたためか、保育園の先生はAさんのお子さんには韓国語が通じにくいと思ったようです。
そこで、Aさんが保育園の先生に言われたのは、
ということです。これに疑問や危機感のようなものを持ったAさんが、私(まめちゃん)に相談してきたというわけです。
保育園の先生の思惑
保育園の先生がこのように言った理由はAさんのお子さんに保育園で韓国語の先生の指示が通りにくい、指示をAさんのお子さんが理解するまでに時間がかかるなどの理由があったのだと考えられます。
そして、家でも韓国語を使うようにと言った理由は多分次のようなことだと思います。
1.お子さんは早く韓国語を覚えることができる。
2.先生は仕事がしやすくなる。
保育園は団体生活を子どもが人生で最初に経験する場所ですし、まだご飯を食べるにもトイレに行くにも先生の助けが必要な子どもも多いです。それプラスお遊戯や歌、工作、簡単なお料理や体操などなど、やる事は山積みだし、子どもに怪我をさせてもいけないし気をつかうことがたくさんあると思います。
そこでAさんのお子さんは外国人同士の子どもというわけでもなく日韓夫婦、しかも母親が韓国語がかなり流暢なら家でも韓国語にしたら子どもの韓国語向上はスピードアップするしそうなれば先生たちも仕事がしやすいのです。
保育園の先生の仕事は何?
ところで、そもそも保育園の先生のお仕事って何なのでしょうか。保育園の先生は「保育士」ですので、ここで簡単に保育士のお仕事を調べてみました。
保育士の基本的な役割は家庭養育の不足を支援、補完することであり、保護者である親と子の関係が円滑で愛情のあるものになるよう手助けすることである。
「13歳のハローワーク 公式サイト」より
これは日本の話ですが、このサイトによると保育士の役割は、「家庭養育の不足を支援、補完すること」です。 つまり、家庭での育児の足りないところサポートし補ってくれるという事だと思います。
そして、ここにはバイリンガル育児の事は書かれていませんし、バイリンガルに育てられる子どものことを想定してないのではないかと思います。
保育園の先生の言う通りにするとどうなる?
それでは、保育園の先生の言う通りに韓国語がペラペラのAさんが家庭でもお子さんに韓国語で話しかけるとどうなるのでしょうか。
多分、次のような流れになると考えられます。
1.父子、母子、夫婦間の言語が全て韓国語となる。
↓
2. 保育園で先生の指示が通りやすくなる。
↓
3.お子さんの韓国語はどんどん上達する。
↓
4. たまに日本語で話しかけたとしても段々と反応が遅くなり聞いて理解しても韓国語で返事が返ってくる。
↓
5.保育園に入る前までは知っていたはずの日本語も段々と忘れていき気がついたら全然日本語が通じなくなっている。
このような過程を経て日本語がわからなくなっていき、日本に一時帰国の時には日本の親戚と言葉が通じず親の通訳が必要となってしまうこともあります。そして、これは韓国語に限ったことではなく、どんな言語を話す子どもにも同じことが言えるのではないかと思います。
それでは、親として何かできることがあるのでしょうか。
家ではどうしたらいいの?
保育園の先生に言われたら、そして学生時代に先生の言うことをよく聞く学生だったら、何も疑わずにその通りにするかもしれません。さらに、立場的には親は自分の子どもを預けていて保育園の先生はその子どもを一定の時間見ているわけですから、信頼関係がないと安心して子どもを預けることができません。
そのため、親ができることは次の2つではないかと思います。
1.バイリンガル育児に関する知識を持つ。
2.保育園の先生に言われても家庭内では日本語を貫く。
では、簡単にひとつずつ見ていきます。
★1.バイリンガル育児に関する知識を持つ。
最近では本やインターネットなどを駆使すれば情報はいくらでも得ることができます。バイリンガル育児については、難しい論文もあればバイリンガル育児ブログ、動画、ウェブサイトなどさまざまです。その中でもやはり先輩ママや先輩パパ、そして専門家がわかりやすく書いたサイトというのがあれば親もバイリンガル育児に関する知識を得ることができ、
「うちの子どもにも数年後にはこんな時期がくる」
「このままだと将来的にこうなる」
など、予測がつくようになります。もちろん、いつもこのブログでも言っているようにバイリンガル育児には家庭の数だけバイリンガル育児の方法があると感じるので、他の子どもがそうだからと言って自分の子もそうなるとは限りません。
でも、そのような情報や知識があるのとないのとでは、親としての心構えや心の余裕が違ってくると思います。
★2.保育園の先生に言われても家庭内では日本語を貫く。
これは一見、保育園の先生に逆らっているように見えるかも知れません。しかし、Aさんの場合でも先生の言う通りにしてたらお子さんが日本語を忘れていくのは時間の問題です。
また、失礼な書き方で誤解を恐れずに言うと保育士とは保育のプロであってバイリンガル育児のプロではないのです。もちろん、バイリンガルやマルチリンガルの子どもがたくさんいる環境で働く保育士ならそういう知識や経験があるかもしれません。しかし、どうやらAさんの場合はそうではなかったようなのです。
そうなると、その環境で子どもの日本語維持・向上は日本語ネイティブのAさん次第となります。そのため、対処方法としては例えば次のようになるかと思います。
・家で子どもと日本語は我が家の方針だとはっきり言う。
↓
それでもダメなら
・バイリンガル育児の専門家の話に従って家では日本語にしている。
↓
それでもダメなら
↓
・とりあえずわかったと返事をしておいて家では日本語を貫く。
多分、周りにバイリンガルやマルチリンガルの子どもが多ければ多いほど、先生は家庭で親の母語を使うことに抵抗を感じないと思います。ポイントとして、子どもに日本語を受け継いでもらいたいがために、あまり家で日本語をと先生に主張しすぎないことではないかと思います。
まとめ
今回は、日本人ママであるAさんからの質問(相談)から、
と保育園の先生から言われた事について、その通りにしたらその後お子さんはどうなるかという話をしました。
繰り返しになりますが、Aさんのような家庭環境で家庭でも韓国語を使ってしまうと次のような流れで子どもは日本語がわからなくなっていきます。
流れ
1.父子、母子、夫婦間の言語が全て韓国語となる。
2. 保育園で先生の指示が通りやすくなる。
3.お子さんの韓国語はどんどん上達する。
4. たまに日本語で話しかけたとしても段々と反応が遅くなり聞いて理解しても韓国語で返事が返ってくる。
5.保育園に入る前までは知っていたはずの日本語も段々と忘れていき気がついたら全然日本語が通じなくなっている。
子どもが日本語を忘れないためにも、親ができることは次の2つです。
親ができる2つのこと
1.バイリンガル育児に関する知識を持つ。
2.保育園の先生に言われても家庭内では日本語を貫く。
過ぎてしまったら二度と戻って来ない子どもの保育園の時代。親は知識と心の余裕を持ってバイリンガル育児ができたらいいですね。