こんにちは。まめちゃん(@mame_chang)です。韓国で二人の子どもたちを日韓バイリンガルにしようと今日も努力中です。
このブログではバイリンガル育児について、先輩ママの経験、やってみた方法、バイリンガルに関する研究や本の紹介、韓国生活などについても書いています。
「バイリンガル」と言っても種類があることや「聞く」「話す」「書く」「読む」の、いわゆる四技能全てが上手にできるのか、またはバランスがよくないのかなど、簡単にいくつかのグループに分けられないのが実情ではないかと思います。
・バイリンガルの種類について ↓↓
バイリンガル子育てをしている親は
とか
など、色んなことを考えてバイリンガル育児をすると思います。そして方針や方法、いつまでやるか、子どもがどの辺まで到達するかは多種多様です。今回は、日韓バイリンガルに育てられたある韓国人の方の話をして、それについて思うことなども書いてみたいと思います。
私はこうやってバイリンガルになった。ある韓国人の話。
私がその人に出会った時、最初の印象は「普通の韓国人」という感じでした。でも話をしてみて次のようなことを感じました。
私は、日本語教師の経験があるためか、つい頭の中で相手が使う日本語について考えてしまうことがあるようです。そして話をしているうちに、ふとその人が言ったのは
というひと言でした。私は
と言いながら頭の中では
「あ、なるほどね。」
と思いました。発音やイントネーションが上手なのにはやっぱり理由があると思ったからです。しかし、文法的な間違いについて少し気になりました。そしてどんな風に育てられたのかや、家庭環境などが知りたくなりいろいろと聞かせてほしいとお願いをしました。
この韓国人の方(以下、Aさんと呼びます)の、家庭環境はざっくりと次の通りです。
★.ざっくりした家庭環境
現在のAさん:すでに成人済
生まれと育ち:韓国
ご両親:父(韓国人、韓国語ができる。日本語はできない)、母(日本人、韓国語と日本語ができる)
兄弟 :Aさんの下に妹が2人
通っていた学校:教育はほぼ全て韓国の現地校
留学経験 :小学校の時、日本の小学校に6ヶ月だけ通ったことがある
では、家庭内の言語や兄弟間、ご両親の言語はどうだったのでしょうか。
どんなバイリンガル育児だったのかな?
Aさんのお父さんは韓国人で、日本語は全くできません。しかし、Aさんはお母さんとは常に日本語だったそうです。また、Aさん自身は子どもの頃、日本語を身につけることにそれほど興味はなかったといいます。しかし、小学校の時に日本の小学校に6ヶ月ほど通ったそうです。
家庭内でAさんのご両親は韓国語で話すそうです。Aさんのお父さんが日本語ができないことを考えると自然な事だと思います。また、Aさんは妹さん2人とは韓国語で話すそうです。妹さん2人は日本文化に興味はあるものの、日本語習得には興味があまりないとのことで、Aさん、上の妹さん、下の妹さんの順に日本語ができるそうです。
また、Aさんは成人していて国籍選択の時は韓国国籍を選んだそうです。理由は、やはり今後も韓国で住んでいくから日本国籍よりも韓国国籍の方がいいと思ったそうです。
また、日本語の「聞く」「話す」「書く」「読む」のAさんの自己評価は次の通りです。
「聞く」 →いつも母と日本語なので大きな問題はない。
「話す」 →いつも母と日本語なので大きな問題はない。
「書く」 →興味なかったのでほぼ練習してない。漢字が苦手。
「読む」 →漢字が苦手なので漢字混じりだとスラスラ読めない。
また、お父さんは日本語がわかりませんがお母さんと子どもたちが日本語で話すことには特に何もいわなかったそうです。そして、Aさんが妹たちと韓国語で話すとお母さんはたまに
とは言うもののお母さんも韓国語がわかるので、それほど強くは言わなかったそうです。
両親のうち一方が日本語がわからなくてもバイリンガルになれる!
Aさんの話を聞いていると、まずバイリンガルの種類としては、
「偏重バイリンガル」
になるのではないかと思います。2つの言語ができるとしても、片方が強いパターンです。Aさんの場合は韓国語の方がかなり強いです。それは韓国で生まれ育っていることや通った学校が全て韓国の現地校であるからではないかと思います。
また、バイリンガルといっても、「聞く」「話す」「書く」「読む」のバランスがあまりよくないパターンになると思います。先ほどのAさんの自己評価が示しているように、お母さんとの会話のおかげで「聞く」「話す」は維持・向上していますが、読み書きはちょっと練習が必要なようです。試しに日本語で書いた文字を見せてもらったのですが、それは小学生が書いたような文字にも見えました。
以前、私はTwitterで次のようなツイートをしました。
、
先日上の子(小学校高学年)が風邪で声がれだったので筆談を勧めてみた
「ママとは日本語」
を頑張ってるので筆談も日本語の文章
もう高学年だけど書く練習をしないと
書く練習をしていた時で筆跡も止まるんだなと実感
筆跡は低学年の時のまま💧
— バイリンガル育児@まめリンガル (@mame_chang) October 19, 2019
このツイートは、うちの上の子の事でしたが、もしかしたらAさんも日本語を書く練習をやめた小学生の頃で、日本語の筆跡はとまってしまっているのではないかと思います。
また、両親のうち1人が日本語がわからない場合その親の母語、または夫婦がわかる言語がコミュニケーションの手段となります。そうすると家庭内で日本語を聞く機会が減ったり、日本語がわからない親が日本語を子どもに教えることを反対したりすると、子どもが日本語を受け継いでいくのが難しいこともあります。
しかし、Aさんの家庭ではご両親の会話は韓国語であったにも関わらず、
「お母さんとは日本語」
は、守られてその結果、Aさんは会話はできるバイリンガルになったのだと思います。
この韓国人の方と話して思ったこと
このAさんの話を聞いて思ったことは、いくつかあります。それは、
・海外育児では実はよくあるパターンなのかもしれない。
・Aさん自身が興味を持てば四技能はきっとバランスよく伸びたのではないか。
・両親の会話が日本語でなくても、子どもには日本語を伝えていくことができる。
・読み書きを嫌がるなら強制はしない。でもそこで読み書きの力は止まる。
海外育児では、日本語がネイティブの親と会話することによって会話はなんとか成人するまで維持(または向上)されるパターンは時々聞きます。しかし、困難に思うのはやはり読み書きです。
Aさん自身は興味がなかったといいましたが、もし興味があったならAさんの四技能は今ごろもっとバランスがよかったのではないかと思います。Aさんのお母さんは韓国語が上手だとのことですが、読み書きは強制せずAさんに任せたとのことです。
強制しない、本人に任せるということが子どもの反発を招かず結果的に長続きし、Aさんがやろうと思った時に読み書きを始められた(正確には再開できた)のではないかと思います。
親だけががんばってもうまく行かない二人三脚のバイリンガル育児。Aさんは「偏重バイリンガル」で四技能のバランスはよくない日韓バイリンガルに育ちました。しかし、Aさん自身が読み書きをやろうと思ったら今からでもそのバランスは少しずつよくなっていくはずです。
まとめ
今回は私が出会った韓国人の方と話していて、発音やイントネーションが上手だと思ったら実はお母さんが日本人であることや、お母さんとはいつも日本語で会話すること、ご両親の会話は韓国語であることなどを紹介し、Aさんの話を聞いていて思ったことなどについて書きました。
Aさんの話から海外でバイリンガル育児をする人が学べることは次のようなことではないかと思います。
ポイント
・海外育児では実はよくあるパターンなのかもしれない。
・Aさん自身が興味を持てば四技能はきっとバランスよく伸びたのではないか。
・両親の会話が日本語でなくても、子どもには日本語を伝えていくことができる。
・読み書きを嫌がるなら強制はしない。でもそこで読み書きの力は止まる。
子どもの様子を見ながら強制せず、家庭の中で日本語が完璧にわかる人がお母さん1人であってもお母さんとの会話はいつも日本語…。実はAさんのようなパターンは言語を問わずよくあるパターンなのかもしれませんが、よくよく話を聞いてみると、ご両親の方針や姿勢、成人するまで長続きした理由などがわかるので非常に興味深いです。
子どもがお腹にいるときから始まるバイリンガル育児……。その長い道のりの中で、今日も根気と努力です。