こんにちは。まめちゃん(@mame_chang)。韓国で2人の子どもたちを日韓バイリンガルに育てようと毎日努力しています。
海外で日本語で育児をしていると、日常会話は親子の努力と習慣でなんとか続けられるのですが、読み書きは自動的には身につかないので日本から通信教育の教材を日本の家族に送ってもらったり海外受講したりします。
そして教材だけでは身につかない「文化的なこと」や「子どもに肌で感じてほしいこと」は日本に一時帰国した時に子どもを日本の小学校などに体験入学させてみたり、近所の学習塾に行かせてみたり児童館などに行かせてみたりして何とか身につけてもらおうとします。
このように親は海外にいても日本に一時帰国しても、考えられる全ての方法を使って子どもに日本語や日本文化を吸収してもらおうと努力します。そして子どもも子どもなりに学んでいきます。
ところがそれでも、ふとした瞬間に
と思うことがあります。それは一体どんなことで理由は何でしょうか。今回は、ある日本人ママの話を聞いて考えたことを書いてみたいと思います。
小学生が通信教育で学べない事がある理由2つ。親にできること2つ。
ではまず、お話を聞かせていただいた日本人ママとお子さんについて簡単に触れたいと思います。
・住んでいる国:韓国
・お子さん:小学校低学年
・日本人ママとお子さんの会話:日本語
日本にはお子さんの小学校の夏休みや冬休みに一時帰国をしていて、日本の小学校に体験入学もしたことがあるそうです。また、家庭ではこの日本人ママとお子さんの会話は日本語ですがお子さんとパパ(韓国人)との会話は韓国語とのことです。そして通信教育は「進研ゼミ」を受講しているそうです。
では、このような環境で「あれっ?」とはどんな場面なのでしょうか。日本人ママの話を参考にしながら、
・通信教育で学べていること。
・通信教育で学べていないと思うこと。
に分けて考えてみたいと思います。そして、「通信教育で学べていないと思うこと」は、最初に書いた「文化的なこと」と「子どもに肌で感じてほしいこと」と共に「言語」にも焦点を当ててみたいと思います。
通信教育で学べていること
小学生を対象とした通信教育は、子どもが家庭で勉強ができるようにと作られたもので、毎月決まった時期に郵便で教材が届きます。子どもは1人で(または親と)その教材をこなし、郵便で宿題などを提出し添削されたものが郵送で戻ってきます。
もちろん最近はタブレット教材などもありますが、今回の日本人ママのお子さんは紙の教材を利用しているので、今回はタブレット教材の話は割愛します(タブレット教材の記事は↓↓参考記事へ)。
・タブレット教材の話 ↓↓
さて、このような通信教育の教材をこなすことで身につけることができるのは、例えば次のようなものです。
★.インプットの部分
・語彙、漢字、表現、聴解力などの日本語力(国語力)
・日本語で教材を読んで得られる日本社会、日本文化に関する知識。
★.アウトプットの部分
・教材で学んだ言葉や内容を問いに答えることで書いてみること。
・教材に書いてある日本の事情について日本人の親と話し、滞在国の事情との違いなど思った事を言ってみること。
他にもありますが、ざっとこんな感じでしょうか。通信教育の教材に書いてあることは、子どもの学年に合わせた内容となっていると思います。新しい言葉や漢字などを知識と共に覚え、宿題などをこなしながら覚えた言葉を自分でも使ってみたり親と話してみたりして身につけていくことができます。
それでは、通信教育で学べていないと思うこととは具体的にどんなものでしょうか。
通信教育で学べていないと思うこと
今回、話を聞かせていただいた日本人ママによると、ここで「あれっ?」という部分が出てきます。具体的に例をいくつか挙げてみたいと思います。
★.1.標識の意味と目的の読み取り
と聞かれたら、このブログを読んでいる方はどう答えるでしょうか。日本生まれ日本育ちの私なら、きっとこう答えると思います。
もちろん小学校低学年と大人(←私)を同じレベルで比べてはいけません。大人である私は人生経験も数倍長いので地震も津波もわかります。
★.2.災害時の自治体の対応
これをみてお子さんは
と思ったそうです。また、「持ち出し袋」についても、この日本人ママは韓国の家にも持ち出し袋を準備してあるのに、お子さんはよくわかってないみたいとのことです。
★.3.知らない言葉を分解して推測する①
この画像の中に「止水板」という言葉があります。この言葉は日本に住んでいても毎日使う言葉ではありません。そのため、日本で生まれ育った大人であっても、止水板という言葉が使われている場面や文脈、そして漢字から
のように考えるのではないかと思います。これには漢字を訓読みにして意味をとり、組み合わせることで全体の意味を場面や文脈を合わせて推測する力が必要です。
日本で生まれ育って日本で教育を受けたら、きっとこれは無意識のうちにできるようになっていると思います。そして言葉を分解して理解するということを体験するのは、きっと中学校あたりの英語の時間だったのではないかと思います。例えば、簡単な単語で言えば次のようなものです。
「important」は重要という意味。でも前に「~ではない」という意味の「un」が付いて「unimportant」となると意味が反対になって「重要ではない」という意味になる。
★.4. 知らない言葉を分解して推測する②
この画像にある日本語では「地いき交流会」の意味がイマイチつかめなかったそうです。これはさきほどの、3. 知らない言葉を分解して推測する① に、近いようにも見えます。「地いき交流会」を、さきほどの3. 知らない言葉を分解して推測する① で私が言った方法で分解するとどうなるでしょうか。
これを①と同じ方法で分解すると逆に意味がつかみにくくなります。その理由は分解しすぎだからです。この場合は意味のまとまりごとに見て、
「地域(ちいき)+交流会(こうりゅうかい)」
としたら、ある一定の範囲の場所でお互いに話したり意見を聞いたりする集まりなんだな、ということがわかると思います。そして「地域」と「交流会」または「地域」と「交流」「会」に分解できると気がつくためには、
と認識できる力が必要なのです。
ここまで、4つの例を画像と共に出しました。ではこれらの4つの例から、
について考えてみます。
通信教育で学べない部分がある2つの理由
日本人ママからいただいた4つの画像とお子さんがわからなかった部分…。この4つを種類に分けて、関係することを矢印の右に書きます。
1.標識の意味と目的の読み取り →文化(気候、社会)
2.災害時の自治体の対応 →文化(政治、社会)
3.知らない言葉を分解して推測する① →言語
4.知らない言葉を分解して推測する② →言語
このように分けてみると最初に私が書いた
「文化的なこと」
「子どもに肌で感じてほしいこと」
「言語」
が関係していることがわかります。もうちょっと見てみると…
★.1.標識の意味と目的の読み取り →文化(気候、社会)
地震や津波という言葉は韓国語にもあります。しかし韓国では地震はそれほど頻繁に起こりません。日本では小学校などで避難訓練が定期的にありますが、韓国の小学校では必ずしもあるとは限りません。またこの画像には韓国語で「쓰나미 파난 빌딩」と書いてありますが、韓国では非常時の避難所は「대피소」という言葉を使い↓のような画像を使うのでピンと来なかったのかもしれません。
★.2.災害時の自治体の対応 →文化(政治、社会)
台風や地震などが起こるとその被害状況がニュースなどで流れます。そして日本の場合は避難所や炊き出しの様子なども放送されます。韓国でも近年は台風の被害が起こりますが、避難所の様子などはあまりテレビで見かけません。
★.3.知らない言葉を分解して推測する① →言語
★.4.知らない言葉を分解して推測する② →言語
ここは、3.と4.をまとめて見ます。通信教育の教材、漢字ドリルなどで勉強すると漢字ごとの音読みや訓読み、単語の読み方と意味などが覚えられ、そして書く練習もできます。しかしこの①3.と4.で私が書いたような言葉を分解して意味を推測していく問題はあるかどうかわかりません。もし、ないとしたらこれが通信教材で学べないことということになります。
このように考えてみると、通信教育で学べない理由は次の2つではないかと思います。
1.日本の通信教材は日本に住んでいる子どもを想定して作られているので、日本で自然に目にするような物については海外在住の子どもへの追加の説明はなく、見たことがある、知っているという前提になっている。
2.言葉をかたまりに分解して意味を推測、類推する力は、通信教材ではカバーされていないか、学校教育でなされている??
2.については、日本語の国語の本を全部見たわけではないし全ての通信教育の教材を見て出した結論ではないので、私の憶測の域を出ません。そして、
私自身は言葉をかたまりに分解して意味を推測するのって、いつ習ったっけ…?
と思い出してみようと思ったのですが、全く記憶にないのです…。私は小中高大全部日本の学校でしたし、小学校高学年からは国語の塾にも通っていました。通信教育は数ヶ月だけして挫折…でした。
そのためどの時点で習ったのか、または日本で生まれ育つ過程で自然に身につけたのか全然記憶にないのです(どなたか記憶にある方、コメントをください…)。
海外日本語育児をしている親にできる2つのこと
それでは海外日本語育児をしている日本人の親にできることは何でしょうか。私が思う今回の「親にできること」は、次の通りです。
・1つ1つ説明していく。
・言葉の分解の方法を教えていく。
日本語で会話をしていると言っても自然に読み書きが身につかないから市販の漢字ドリルや通信教育の教材を取り寄せて1つずつ練習していく…。
これと考え方は同じで、子どもがわからないことは文化的なことであれ言語的なことであれ1つずつ説明していくのがいいと思います。
…とはいえ、
という人もいると思います。そんな時は、もし参加している日本語補習校や日本語教室、自助グループなどがあれば、授業で取り上げてもらうのも方法です。家庭だけではキツいと感じても家庭の外とも連携が取れれば、子どもがそのような日本語や日本文化、日本事情に触れる機会は増えます。
まとめ
今回は、ある日本人ママから聞いた話から考えたことをブログに書いてみました。今回のポイントは以下の通りです。
ポイント
・通信教育の教材では学べることとそうでないことがあり、それは「文化的なこと」「子どもに肌で感じてほしいこと」「言語」の3つある。
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★.通信教育の教材で学べないことがある理由は2つ。
1.日本の通信教材は日本に住んでいる子どもを想定して作られているので、日本で自然に目にするような物については海外在住の子どもへの追加の説明はなく、見たことがある、知っているという前提になっている。
2.言葉をかたまりに分解して意味を推測、類推する力は、通信教材ではカバーされていないか、学校教育でなされている??
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★.親にできることは2つ。
・1つ1つ説明していく。
・言葉の分解の方法を教えていく。
こうやって見ると、海外日本語育児ってやることがいっぱいです。子どもを常に観察しながらできてないところを補強していく….。そして日本語補習校、日本語教室、自助グループなどと連携していく。
とても地道ですが、1人すべてをやろうとしないで周りの日本人ママ/日本人パパなども同じ問題意識を持っていたら一緒に進めていけたら、それが理想ではないかと思います。
最後になりましたが話を聞かせてくれて画像も提供してくださった今回の日本人ママさん、ありがとうございました!