こんにちは!まめちゃん(@mame_chang)。韓国で2人の子ども達を日韓バイリンガルに育て始めて、早くも約15年が経ちました。
バイリンガルと言えば2つの言語を自由自在に操ることができて、ペラペラ。こんなイメージはないでしょうか。それに加えて私はバイリンガルといえば外国や外国語の知識も豊富な人のことを指すのだと勝手に思っていました。
私が勝手に思っていたことはある程度は合っているのですが、そうとは限らないこともあります。私は自分の子どもたちをバイリンガルに育て始めててから、それまで以上にバイリンガルやバイリンガル児のことを意識し始め自分でも学び始めました。
もともと日本語教師で、大学院生だった頃は第二言語習得の分野を研究していた私は「コードスイッチ」なんて言葉も知っていました。「コードスイッチ(コードスイッチング)」は、バイリンガル、トリリンガルなどが言語を切り替えることを意味します。
そしてそれは場面や相手によって切り替えるのですが、バイリンガルは自然にそれができると言います。今回は、この言語の切り替えについて、ニュース記事の内容をご紹介しながら書いてみたいと思います。
「バイリンガルの言語の切り替えは自然」アメリカの大学が発見!
まずはニュース記事の概要です。
記事の内容はざっくり次の通りです。
ニューヨーク大学の研究チームは、韓国語・英語のバイリンガルの脳の神経活動を測定した。調査に協力した人は単語の組み合わせと写真をコンピューター画面でみて写真と単語が一致するかや、画面に表示される2つの単語で一般的な文を作ることができるか(例:「つららが溶ける」「ジャンプが溶ける」)などを実験した。実験の結果、2つの言語がミックスされた単語のペアを理解する時、1つの言語を理解する時と同じ神経メカニズムを使っていたことがわかった。つまり提示された単語が別々の言語であっても脳は自然に受け止めて意味を考えたり、それで文を作ることができるか判断できる。
...ということです。韓国語がわからない方のために日本語と英語で書いてみると次のような実験をしたということです。
・ミルクの画像 + 「ミルク」という単語 →画像と単語の意味が一致するか?
・「milk」+「こぼれる」 = 「ミルクがこぼれている画像」 ←これを見て文が成り立つかどうか?↓↓
ニュースの元記事にあったリンク「What the Bilingual Brain Can Teach Us About Code-Switching」よりスクショ。
そしてこのように2つの言語を提示された時、頭の中では1つの言語を理解する時と同じような感じで処理がされていたので「脳が別の言語だと反応しているのではなく、とても自然に処理がなされている」ということです。
バイリンガルはなぜ自然に切り替えができるの?
バイリンガルは場面や相手によって言語を切り替えている、ということは知っていただけにかなり興味深いです。しかし、ここで私なりの疑問がいくつか湧きます。
1.単語が提示されるのではなく、たとえば「韓国語しかわからない人」「英語しかわからない人」が同じテーブルについていたら韓国語と英語のバイリンガルの人の脳はどう反応して韓国語と英語を使い分けるのだろう。
2.英語で誰かと話している時に韓国語しかわからない人から電話がかかってきたら、電話に出た途端韓国語に切り替わるはず。その瞬間に脳はどう反応するのだろう。
3.今回の実験に協力した人がどのぐらい英語と韓国語ができるのかわからない。英語力と韓国語力に差がある場合や子供の頃から韓国語と英語のバイリンガルに育てられた人と韓国で生まれ育って後で英語を身につけた人では差があるのだろうか。
4.韓国語と英語だけでなく他の言語はどうなのだろうか。
5.年齢や性別によって実験結果に差はでるのだろうか。
6.他の人で韓国語と英語がわかる人でも同じ結果がでるのだろうか。
なんだか疑問がつきませんが実験結果を疑っているわけではなく、あくまでも言語に対する好奇心からの疑問です。もっと実験に協力する人の数を増やせば一般論としても言えるのではないかと思います。
それはさておき、この結果からどうしてバイリンガルが自然に言語の切り替えができるのかというと私の考えは以下の通りです。
ということです。
「自然な切り替え」についてもっと知りたい!
ここまでアメリカでの研究について紹介して、私の意見も書きました。記事をゆっくり読み返してみると、この実験についてもっと知りたい!と思うことがあります。それは次のようなことです。
1.実験の詳しい内容とやり方。
2.実験結果を数字や図で表したもの(あればですが…)。
3.実験に参加した人数や属性(アメリカ滞在歴、韓国語と英語はどのぐらいできるか)など。
なぜなら、実験結果というのは対象ややり方がちょっと変わっただけで結果が変わるということがあるからです。論文などになったらもっと詳しく書かれているはずなので、それをたどっていけばその辺を知ることができるように思います。
バイリンガル育児をしている親としてできることは?
それではバイリンガル育児をしている親として、この記事が参考になることは何でしょうか。それは、いつもブログに書いているように、この情報を親の知識として持っておくことです。
先ほど書いたように実験の詳細がわからないと、自分の子供にどう適用していいか判断ができない部分もあります。ですが、この記事は参考になるのでこのような研究結果があることや自分の子どもならどうだろうか、などと考えるだけでも価値があることだと思います。
「研究」とか「実験」というと、なんだか難しいと感じる人もいるかと思いますが、
でも十分のような気がします。要は詳細まで理解しなくても大枠(ポイント)だけでも知っていくのがいいかなと思います。
まとめ
今回はアメリカの大学で行われた韓国語と英語のバイリンガルの研究(実験)結果から、2つの言語を使うバイリンガルは2つの単語を見せられても、1つの言語を処理するときと同じような脳の神経メカニズムが見られたため、バイリンガルの言語の切り替えは自然なことであると結論づけています。
研究に協力した方の詳しいプロフィールや実験の詳しい手順などがこの記事からはわからないので、この結果を一般化するのは難しいと思います。しかしこのような結果があるということを親が知っておくと将来なんらかの形で役に立つことがあるかも知れません。
「研究」や「実験」という言葉だけで、難しいという場合は「そんな話もあるんだ。」というだけでもいいと思います。
個人的にはこの手の研究が引き続き、色々な角度から行われたらもっと興味深い結果がでるのではないかと期待しています。
★最後に今日のブログの元記事
「バイリンガルの脳はなぜ自然に2つの言語を操れるのか? ニューヨーク大が発見」2021年11月24日 exciteニュース
ニューヨーク大学の研究チームは、バイリンガル話者の脳がいかにシームレスに2つの言語を切り替えているかについて新しい発見をしました。
脳は「切り替え」を認識しない
今回の調査によると、私たちの脳には「言語が切り替わったことを検出しない」メカニズムがあることがわかりました。これにより複数の言語の移行がシームレスに行われるため、バイリンガル話者は自然に2つ以上の言語を話すことができるといいます。
「私たちの脳は複数の言語を使用することが可能です」と、ニューヨーク大学のSarah Phillips氏は説明します。 「確かに言語によって、使用する音や文法が異なることがあります。しかし結局すべての言語は、単語を組み合わせ『私たちが頭のなかに描いている複雑な考えを表現する』という点では共通しているのです」。
バイリンガル話者は、この「単語を組み合わせて考えを表現するプロセス」が非常に上手であるとのこと。例えば、日本語のみを話す人が行う脳のプロセスと同じように、複数の言語を組み合わせて自らの考えを説明しているということになります。
脳磁図検査で判明
これを実証するために、ニューヨーク大学のチームは、韓国語・英語のバイリンガル話者の神経活動を測定しました。まず調査対象者は、一連の単語の組み合わせと写真をコンピューター画面で見ます。
次に、写真が前の単語と一致するかどうかを示すように指示を受けます。画面に表示される2つの単語は通常の文を形成するか、または意味のない動詞のペア(例えば、「つららが溶ける」と「ジャンプが溶ける」)。また、2つの単語は単一の言語(英語または韓国語)、あるいは両方の言語がミックスして表示されます。
被験者の脳の活動を測定するために、研究チームは脳磁図検査(MEG)を活用しました。MEGは、脳から発生する電流によって生じる磁場を記録することで、神経活動をマッピングする手法です。
実験の結果、韓国語と英語のバイリンガル話者は、両方の言語がミックスされた単語のペアを理解する際に、単一言語の表現を解釈するときと同じ神経メカニズムを使用していたことがわかりました。 複数の単語の意味を組み合わせる役割を担う左前側頭葉が、受け取った単語が同じ言語からのものか、異なる言語からのものかを区別しなかったのだといいます。
今回の発見は、脳には言語が切り替わったことを「認識しない」メカニズムがあるため、言語の切り替えはバイリンガルにとって自然なことであること示しています。Sarah Phillips氏は「バイリンガル話者の脳は、さまざまな言語の単語を含む複雑な表現を、驚くほど簡単に解釈できるようだ」とコメントしました。
Bilingualism Comes Naturally to Our Brains(英語の元記事は多分これ)